Part 6:クリスの出産と子育て
その4 巣立ち
 子供達は生後1ヵ月目を迎えた。
 家の中は運動場と化し、みな団子になって走り回っている。彼らのお気に入りはソファの下。静かになったなぁと思うと、みんな思い思いにソファの下に入ってすやすや眠っている。つかの間の静けさが戻ってくる時間だ。

 離乳食を始めても、子供達はすきあらばクリ母さんのおっぱいをねらっている。母もゆっくり寝そべっておっぱいをやるきはなく、立ったまま子供達をぶら下げていることが多くなった。お疲れさまです。

 VIVIの行き先がキャンセルになったことで、クリスのブリーダーさんや友人に声をかけたり、初めてインターネットにつないで里親サイトなどをのぞいてみたりしたのだが、いっこうに進展は見られない。
アリスの引き取り日が決まり、TAMAI君もダグラスと命名され、次第に巣立つ日が近づいて来るというのに.......。
だんだん情も移って手放したくないと言う気持ちと、子供達3頭は無理という現実的問題の板挟みで、私のストレスもかなりのものになっていた。何とかしなければ。気ばかりあせっても袋小路から出られない。
 そこで私はVIVIの写真を車に貼って走ることにした。出来れば近くに引き取られてほしいという気持ちもあったからだ。
買い物、仕事、遊び、常に車のリアウィンドウとサイドウィンドウに貼って走り回った。
路上に停めた時など、戻ってみると連絡先が切り取られていたこともあったが、連絡は来なかった。

 6月22日、全頭1回目の混合ワクチン。さすがにこのチビ達を一人で車に乗せて無事に行き着く自信はなかったので、獣医さんに往診を頼んだ。

 7月3日、生後2ヵ月目を目前にアリスが、翌4日にはダグラス巣立っていった。みんな幸せになって欲しい。
急に2頭減ってしまい、何か寂しい。そんな私の気持ちと同じなのか、クリ母さんがやけにその晩子供達を遊びに誘っていた。

 7月6日、七夕の笹にVIVIの家が早く決まるようにと書いた短冊をつるした。

 7月7日、今日も早朝からK公園にクリスを連れて散歩。人目に付くようにと公園入り口を入ったところに車を止める(本当は入っちゃダメなんだけど)。
 その日の昼だった、広告を見た人から問い合わせの連絡があり、明朝見にみえることになった。

 7月8日、朝その人がみえた。クリス初め子供達はひととおり挨拶に行くと、なぜかVIVI以外は自分の定位置に戻って寝てしまった。VIVIだけがその人にピッタリくっついている。彼にはわかっていたのだろうか、次が自分の番だということが。そして自分たちには関係ないと言うようにその場から離れてしまったハンスとニッキー。犬達にはわかっていたに違いない。ここ1ヵ月の私の様子から........。
そして、翌9日、VIVIも巣立っていった。あっという間で、心の準備も出来ていなかったが、優しそうなその人にすべてを託し、とにかく幸せになってくれることを祈った。
 VIVIはVIVOと名付けられ、お兄ちゃん犬と仲良くやっている。情に流されず、無理に残さなくて本当に良かったと今更ながら思う。

 

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